【12月】師走(しわす)~桐に鳳凰~

旧暦の由来

 この月に読経を読む師僧を迎える家が多く、結果、師僧が忙しく走リ回って師走(しわす)と呼ばれるようになりました。

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札の解説

 中国神話の架空の霊長「鳳凰」が青桐にとまっていたという伝説が、この絵札の由来です。また、最上から最下まで、もしくは最初から最後までを意味する「ぴんきり」の「きり」はこの札からきたと考えられています。

ことばあそび

 青桐の悟桐「ごど」と鳳凰「ほうお」で、尻が同じになっています。 

月札の覚え方

 はじめから最後を意味する「ぴんきり」から、「きり」=最後=12月だと考えると覚えやすいです。

 

関連知識

桐 ~桐紋を挙げだしたらきりがない~

 絵札の鳳凰がとまり木にしている青桐は、一般的な桐(白桐)とは異なる種類だと考えられています。桐はその湿気に強く割れにくい性質から、良質の木材として古くから用いられてきました。桐箪笥などはその典型的な例でしょう。また、この桐を用いた紋である桐花紋は皇室や朝廷の副紋として愛用されてきました。この副紋は花の数が5と7で構成される五七桐で、かの有名な豊臣秀吉に天皇が下賜したともされています。

 一方、花の数が3と5で構成される五三桐は、皇宮警察本部や法務省が用いている紋で、こちらはあの織田信長に天皇が下賜したと言われています。ちなみに、五七桐は五三桐より階級が上(格上)のようです。

 他にも、太閤秀吉(豊臣秀吉)が独自に作った太閤桐(いろんな人に譲ってしまって威厳が下がった五七桐のかわり)や、明智光秀が愛した桔梗桐(下が桔梗の花で上が桐の花)、桐好きで秀吉と縁の深い千利休が使った利休桐など、例をあげたしたら枚挙に暇がありません

 

鳳凰 ~鳳と凰は不死鳥のつがい~

 鳳凰は中国神話の架空の霊長で、悟桐の木にとまるとされています。中国史始めの頃の記述によると、鳳凰の鳳(ほう)は雄鳥、凰(おう)は雌鳥で、二羽がつがいになった状態のことをさしていました。これは陰陽理論にも関係しています。

その後、一羽の雌の鳳凰と雄の龍のセットで描かるようになり、この雌の鳳凰は、謙虚さ・誠実・貞操・慈悲の象徴として女性の理想像にもなっています。ちなみに、鳳凰は欧米ではフェニックス、インドではガルーダと呼ばれ、名前は違いますが同一のものだと考えられています。

 

 

おわりに

 花札の最後を飾るのが、ダジャレ的な桐と実在しない架空の鳳凰というのはどこか意味深な気がします。さて、これで花札すべてについての解説は終わりましたが、いかがだったでしょうか。

 文化・歴史・古典・神話・動植物の生態に至るまで、花札を基軸にして様々な分野に拡大して解説したので、以前より知識が深まっていることかと思います。ジャンルが多岐に渡り、興味のない分野は読みにくいという点もあったと思いますが、少しでも物事を知っていく喜び、勉強する面白さが伝われば私としては光栄であります。

 このサイトを作るにあたって、日本の古典・文化・歴史を知ろうと思うきっかけを与えてくれた人々や芸術作品の数々、そしてこのサイトを制作する上でのITスキル・デザインスキルの基礎を指導してくれた人々すべてに対して、感謝の意を表したいと思います。

2019.09 りんとちゃー