【5月】皐月(さつき)~菖蒲に八つ橋~

旧暦の由来

 稲の苗である早苗(さなえ)を植える時期だから皐月(さつき)というのが由来ですが、覚えにくいようであれば競馬のG1レースの皐月賞、となりのトトロの登場人物のメイ(5月)とさつきと考えてもよいと思います。

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札の解説

 描かれているのは菖蒲(あやめ)ではなく杜若(かきつばた)だそうで、「いずれ菖蒲か杜若」という故事があるように、その花はとても似ています。でも、あやめは花弁の白い部分が網目(文目=アヤメ)模様になっているので、ふつうはすぐにあやめだとわかります。おそらく、菖蒲(しょうぶ)とゲームの勝負(しょうぶ)を掛けるという意図から、故意にそうしているのだと推察されます。

 八ツ橋は三河(愛知県)の八つ橋が起源で、「伊勢物語」で在原業平(ありわらのなりひら)が「からころも きつつなれにし つましあれ はるばるきぬる たびをしぞおもふ」と詠んだことでも有名です。この和歌は折句とも呼ばれ、頭文字をとると「か・き・つ・は・た」になります。

ことばあそび

 杜若(かきつばた)の「かき」、八ツ橋(やつはし)の「や」でお尻が同じになっています。

 

月札の覚え方

菖蒲を勝負とかけて、番しょうぶ。もしくは、端午の節句(日)の菖蒲湯というイメージから、菖蒲=月札と連想して下さい。

 

関連知識

 端午の節句(菖蒲の節句)は、現代では男の子の健やかな成長を願う行事(こどもの日)になっています。「端午」の端(はし)とは「はじまり、最初」という意味で、「端午」とは月のはじめの午(うま)の日をさしていました。その後、旧暦の午(うま)の月が5月なのと、午(ご)と五(ご)が同音なことが重なって、5月5日が端午の節句となりました。

端午の節句の歴史 ~貴族から武士、武士から庶民へ~

 奈良時代には、端午の節句の日に、貴族たちが菖蒲や薬草で厄除けと健康を願っていました。その後、鎌倉時代に「菖蒲」と「尚武」が同音なこと、菖蒲の葉形が剣を連想させることなどから、武士たちが男の子の成長と健康を祈る祝い日に変わりました。鎧兜や刀はその象徴です。そして、江戸時代にはその鎧兜や刀が五月人形に、家紋入りの幟(のぼり)が鯉のぼりへと変遷していったのです。

 

菖蒲 ~薬効たかき植物~

 菖蒲は、その香りが邪気を祓(はら)うといういわれから、厄除けとして古くから軒先に飾られていましたが、江戸時代に入るとそれをお風呂に入れて菖蒲湯として浸かるようになりました。これは、菖蒲の精油としての解熱鎮痛・咳止めなどの健康効果と、その葉から出る強い香りが、今で言うハーブの役割を果たしたからです。ちなみに、菖蒲湯に用いる「菖蒲(しょうぶ)」と「あやめ(花菖蒲)」は全くの別物で、菖蒲を古語で「あやめ」と言うので、勘違いされるようになったみたいです。

 

柏餅 ~子孫を繋げますうように~

 柏が新芽が出るまでその葉を絶対に落とさないということから、「子どもが生まれるまで親が生きていられるように」「跡継ぎが途切れることのないように」と願う縁起物とみなされ、子孫繁栄のために端午の節句に食されるようになりました。また、柏の葉には抗菌・防腐作用があるので、おにぎりを包む竹の葉と同様に、食べ物を腐らせないで長く保存する役割で巻かれていたと考えられます。

  

ちまき ~楚の屈原に捧ぐ~

 中国戦国時代の楚の詩人である屈原は、王に対して批判的態度をとったがために追放され、放浪のあげく汨羅(べきら)の川に身を投げてその生命をたちました。その屈原の命日の日(5月5日)に汨羅の川に供養のため投げ入れられるようになったのがいわゆる「ちまき」です。ちまきは屈原の亡骸が魚にたべられないようにするためのもので、それくらい彼は国民に愛されていました。粽(ちまき)は本来、モチ米やウルチ米の粉を笹の葉など包み、藺草(いぐさ)で固く縛って蒸したものですが、今では竹の葉で包んで食べられることが多いみたいです。

  

こいのぼり ~竜の化身~

 鯉は中国で古来から立身出世の象徴とされていました。これは「登竜門」の故事に由来し、竜門という険しい滝を、唯一登りきって竜になったのが鯉だったからだそうです。また、「俎(まないた)の上の鯉」という故事があるように、運命を受け入れる潔い精神も徳性として高くかわれ、鯉が祝い事に用いられるようになりました。ちなみに、鯉のぼりの五色の吹き流しは中国の五行陰陽に由来し、主に魔除けの役割を果たしているそうです。

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まとめ

 いかがでしたでしょうか。端午の節句というのは、はじめは貴族の間で健康を願うために執り行われた祝い日でしたが、それが江戸時代になって、武士たちが男の子たちの健やかな成長を願う日へと変わっていったことがわかるかと思います。端午の節句に関わらず、日本の伝統行事にはすべて由来・理由があるので、行事をおこなう前にネットや本で調べて、日本人としての知識・教養を深めるのもいいかもしれません。。