【6月】水無月(みなづき)~牡丹に蝶~
旧暦の由来
夏の田植えの際に、田んぼに水を引き入れて水が無くなっていくことから、水無し月⇨水無月となりました。
札の解説
牡丹(ぼたん)は別名「百花の王・富貴花・深見草」とも呼ばれ、蝶は「回生・復活」の象徴とされています。そういった理由から、牡丹紋(源氏)や蝶紋(平氏)のように家紋として武将に愛されたり、牡丹文様や蝶文様のように着物の文様として使われました。ちなみに、蝶が図のように牡丹の上側をとんでいるように置くのが正しい位置で、逆に置くのは間違いです。
ことばあそび
牡丹の別名である深見草「ふかみくさ」と蝶「てふてふ」で、頭と尻が同じになっています。
6←数字の下の丸の部分がボタンのように見えなくもないので、牡丹(ボタン)とくれば6月札と考えましょう。
関連知識
牡丹 ~艶美かつ高貴な花の王さま~
牡丹は、かの楊貴妃の美貌の形容に用いられたように、幸福・富貴・高貴を象徴する魅惑的な花です。「立てば芍薬、座れば牡丹~」とあるように、安定感をもって落ち着いて座っている女性をさす時に使われます。また、奈良時代に空海が唐から持ち帰ったとされ、繁栄・富をあらわす花として古くから詩歌・絵画・文学などのモチーフになってきました。
牡丹を用いた食べ物には「牡丹餅」と「牡丹鍋」があります。牡丹餅はぼた餅と読み、牡丹の咲く春の彼岸に供えられて食します。一方、萩(はぎ)が咲く秋の彼岸に供えられるのが「おはぎ」で、両者は名前こそ違いますが中身は同じものとされています。ちなみに、牡丹鍋は猪肉を入れた鍋のことですが、花札の「牡丹と蝶」とは直接は関係がなさそうです。おそらくお皿に並べた猪の肉の盛り付けが、牡丹の花のように見えたことが由来ではないでしょうか。
蝶 ~女性のメタモルフォーゼの象徴~
蝶はキリスト教では「復活」の、ギリシャでは「魂」の象徴とみなされ、古来から死や霊と結びつけらることが多い不吉な存在でした。でも日本では全く逆で、華やかに変容する若い女性に見立てて、着物・振り袖の文様に使われてきました。これは、卵⇨芋虫⇨さなぎ⇨成虫と次第に美しく変容していく様を、女性の生き方と結びつけたことがはじまりとされています。
ちなみに、卵⇨芋虫(幼虫)⇨さなぎ⇨成虫というように、四段階で姿形を変えていくことを完全変態といいます。。
まとめ
いかがでしょうか。牡丹も蝶も、日本では、美しい女性を想起させる愛すべき存在だったということがわかるかと思います。6月の花札について調べるだけで、歴史や日本文化、生態学と派生的にリンクするのは面白いですね。何気なくしている遊びも、その意味を考えると風情があって趣き深く感じます。