【2月】如月(きさらぎ)~梅にうぐいす~
旧暦の由来
真冬の寒さが厳しく、衣服を重ね着をする(=衣を更に着る)から派生して、衣更着(きさらぎ)⇨如月(きさらぎ)となりました。
札の解説
漢詩で花と言ったら梅の花を指すように、梅は中国の代表花とされてきました。その後、万葉集や古今和歌集などにも用いられ、日本を象徴する美しい花として広く世間に広まりました。一方のうぐいすも日本を代表する鳥なんですが、札に描かれている鳥には違和感を感じてしまいます。そうです。うぐいすは緑色ではなくて灰色なんです。ということはどういうことなんでしょうか。その答えについては、下の関連知識のところで詳しく紹介したいと思います。
ことばあそび
梅の「うめ」、鶯の「うぐいす」で頭の文字が同じになっています。
梅の音読みが「ばい」なのでそれを2回繰り返して「バイバイ」(2)になります。若干強引かもしれませんが、2月札だけ上手い語呂合わせが思いつきませんでした・・。
関連知識
梅にうぐいす ~春のベストカップル~
「梅にうぐいす」とは、絵になるような絶妙で素敵な組み合わせ・切っても切れない関係・見事に調和するもののことで、自然界に実際に存在するのではなく、詩的・絵画的に美しいとされるペアリングのことをさします。古く中国の漢詩にはじまり、古今和歌集の中でも詠われることが多かった「梅とうぐいす」、今でもややくだけた手紙の時候の挨拶で、梅鶯(ばいおう)の候として用いられることがあります。類義語では「牡丹に蝶」、「松に鶴」、「竹に虎」、「紅葉に鹿」、「猿に絵馬」、「柳に燕」などがあり、対義語では、皆さんご存知の「水と油」があります。そんな理想的なペアである「梅とうぐいす」ですが、歴史的には大きく勘違いされてきた経緯があります。それについて事項でみていくことにしましょう。
梅の木にとまる緑色の鳥 ~うぐいす色は人々の勘違い~
梅の木に止まっている緑色の鳥、といったら皆さんは何を連想しますか?昔の人はうぐいすだと思っていたそうです。そもそもうぐいすは虫を食べる鳥で、警戒心が強いので滅多に梅の木にとまることはないそうです。では、緑色の鳥は何なのか。実はめじろだったのです。うぐいすは灰色なので、その間違いは明らかです。そういう勘違いされたイメージのままで、今まで人々のあいだに伝わってきたので、私たちも、うぐいすといったらうぐいす色の緑を連想するようになってしまったのです。そういう経緯があるからか、花札における「梅とうぐいす」も、イメージとして緑の鳥が描かれたのだと考えられます。
2月札の鳥の正体 ~うぐいす・めじろ論争~
では、本来とはちがう生き物(めじろ)だから花札の2月札が間違っているのかと言うと、そうではありません。そもそも、花札というのは娯楽であり、あそびであり、江戸っ子の粋の象徴なのです。描かれているのはデザインであって、実際のものを模写した写実ではないのです。そのことは極楽鳥みたいな燕や、顔が真っ赤な鶴にもあらわれています。デザインなのだから似ていなくてもいいし、別の鳥でもいいんです。それをこれはめじろだから間違いだ、といってしまうのはナンセンスそのもの。いわば粋じゃないんです。花札には「しかと」とか、「ぴんきり」とか「坊主」とか、「小野道風」とか、「ことばあそび」や小粋な「はからい」がたくさん詰まっています。だからここは、大衆的娯楽として割り切ったほうがいいのではないでしょうか。
まとめ
1月は松で、2月は梅とまさに縁起の良いもののオンパレードですが、そんな縁起の良いものばかりをたくさん取り入れようとした結果生じたのが、今回の「鳥違うよ」論争でしょう。でも、娯楽あそびとして割り切ってしまえば、そんなにも気にかからないかと思います。また、今回気がついたのは、何かを調べる際には複数の資料を読み、物事を多面的に捉えることの大切さです。情報社会だからこそ事実を誤って認識しないように、情報をしっかり分析し、真実を見抜くリテラシーを身につけなければならないのだと思います。